私は、息子が岩手県の大学に通っていたこともあり、何度も岩手県を訪れていました。
そのたびに、鉄瓶、鍋、風鈴など様々な南部鉄器を目にして、趣のある美しさに惹かれていました。しかし、高価でなかなか手軽に購入できずにいました。
きっかけは2024年5月、大好きな大谷翔平選手がSNSでブルーの南部鉄瓶を投稿したことでした。新しいブルーの色合いと、八角形の斬新なデザインに「これ、ほしい~!」と思いました。
それから、南部鉄瓶への興味が再び燃え上がり、いろいろ調べ始めました。 ネットでは「鉄瓶で沸かした白湯はとてもおいしい」というレビューがたくさん見つかり、ますます使ってみたくなりました。
大谷選手の使っている「みやび」は人気で一年待ちでした。さすがに一年は待てないし、初めての鉄瓶は定番の黒がいいかなと思い、岩鋳の鉄瓶を買うことにしました。
この記事では、南部鉄瓶に興味のある方や、貧血で悩んでいる方に向けて、私の体験をお伝えしたいと思います。
南部鉄器とは
南部鉄器は、岩手県盛岡市を中心に作られている伝統工芸品です。
型に溶かした鉄を流し込む鋳造方法で作られ、重厚感のある質感と味わいが特徴です。約400年前より保護育成され、国の伝統的工芸品に指定されています。
南部鉄器の主要メーカー
岩鋳(いわちゅう):1902年創業、岩手県盛岡市。
欧米では「IWACHU」ブランドとして高い人気を得ている。伝統工芸士の職人が在籍し、昔ながらの「焼型製法」を継承しながらも、IH対応製品など現代の生活スタイルに合わせた商品開発に注力している。

私は、岩鋳の南部鉄瓶と鉄フライパンを所有しています。
及源(おいげん):1852年創業、岩手県奥州市水沢。
OIGENブランドとして国内外で展開、仕上げの完成度の高さは国際的にも評価され、ニューヨーク近代美術館のカタログに掲載されるほど。
アイデア豊かなユニークな製品が特徴で、伝統と実用性を兼ね備えたキッチンウェアは料理好きな方に特に支持されている。
及富(おいとみ):1848年創業、岩手県奥州市水沢。
かつては伊達藩のお抱え釜師として活躍した歴史を持ちます。特に鉄瓶は職人の手仕事が光る逸品として人気で、使い込むほどに味わいが増す耐久性の高さも魅力。
最近ではカラフルでモダンな製品も手がけている。大谷翔平選手がSNSで紹介したブルーの南部鉄瓶は及富製の「みやび」という製品で注文殺到。届くまで約1年待ち。
私が購入した南部鉄瓶:岩鋳の鉄瓶 7型900㎖アラレIH対応(内面釜焼)
実際に岩手県に出向き、手に取って選びたかったのですが、楽天で岩鋳の鉄瓶 7型900㎖アラレIH対応(内面釜焼)¥18,700を購入しました。
届くまではドキドキでしたが、実際に使ってみると大満足の一品です。水を8分目程度入れて沸かすと、大きめのカップ2杯分くらいになり、日常使いに最適なサイズ感です。
重さは1.8kgで、60代女性の私には、この大きさと重量がちょうど良いバランス。これより重いと扱いにくかったのではないかと思います。
この鉄瓶は、南部鉄器の代表的な「アラレ模様」で、取っ手が倒れるタイプです。
アラレ模様とは表面に小さな突起を均一に配した伝統的なデザインで、雪の結晶や霰(あられ)に似ていることから名付けられました。
装飾的な美しさはもちろん、熱を均一に伝える機能性も備えているとされています。

「内面窯焼き」は、鉄瓶を高温で焼くことで内側に酸化被膜を形成する伝統技法です。
この被膜には錆を抑える効果があり、沸かしたお湯には二価鉄を多く含んだ鉄分が溶出します。これによってお湯がまろやかになり、コーヒーやお茶の風味も一層引き立ちます。

特筆すべきは、鉄瓶で沸かした白湯の飲みやすさです。不思議なことに、カップ一杯の白湯でもすんなりと飲み干せてしまいます。「鉄瓶で沸かした白湯はおいしい」というレビューの真実を、身をもって実感しました。
デザイン性と実用性を兼ね備えた南部鉄瓶は、使わない時も台所に置いておくだけで、空間に趣と風格を与えてくれる素晴らしいアイテムです。
伝統工芸品ならではの存在感が、日々の暮らしに潤いをもたらしてくれます。
南部鉄瓶のメリット
白湯が格別においしい
南部鉄瓶で沸かした白湯は、水道水のクセや塩素臭が和らぎ、まろやかでやわらかな口当たりになります。
これは鉄の作用により水中の塩素が中和されることと、微量の鉄分が溶け出すことで実現する味わいです。
健康にうれしい鉄分補給効果
南部鉄瓶の大きな特徴は、使用するたびに自然と鉄分が摂取できることです。特に内面釜焼きの鉄瓶からは「二価鉄(Fe²⁺)」が溶け出します。
この二価鉄は体内での吸収率が高く、サプリメントで摂取する鉄分よりも自然に体に取り入れられるとされています。
特に女性に多い鉄欠乏性貧血の予防や改善に役立つほか、冷え性や疲労感の軽減にも貢献する可能性があります。毎日継続して使用することで、気づかないうちに健康をサポートしてくれます。
100年使える耐久性と味わいの深まり
南部鉄瓶は適切にケアすれば100年以上使える耐久性を持ち合わせています。
使い始めは新品の黒い輝きがありますが、使い込むほどに独特の風合いを帯び、鉄瓶内部には湯垢と呼ばれる白い保護膜が形成されていきます。
この湯垢が厚くなるほど、お湯の味わいはまろやかに変化し、鉄器としての風格も増していきます。
一般的な調理器具が数年で劣化する中、南部鉄瓶は使うほどに価値が増す、まさに「育てる道具」なのです。
多様な熱源に対応する実用性
伝統工芸品でありながら、現代の生活様式にも対応しているのが南部鉄瓶の優れた点です。
底が平らになっているタイプは、直火だけでなくIHクッキングヒーターでも使用できます。
南部鉄瓶のデメリットとケア方法
重さ
鉄瓶自体、かなりの重さがあります。お湯を沸かすときは、鉄瓶+水の重さになるので、大きい鉄瓶だと注ぐときに大変かもしれません。
錆びへの対策~4つのポイント~
鉄製品の宿命である錆びですが、適切なケアで長く美しく使い続けることができます。
1.使用前の湯垢づけ
新しい鉄瓶を使う前に必ず行いたいのが「湯垢づけ」です。
硬水(エビアン水など)を8分目まで入れ、中火で沸騰させます。その後、お湯を捨てます。これを2~3回繰り返すと内側に白い点々が付きます。
この白い点々や膜が「湯垢」と呼ばれるもので、鉄瓶を錆びから守る効果があります。
この湯垢は大切な保護膜ですので、触ったり洗い落としたりせず、そのまま利用しましょう。

2.使用後は完全に乾燥させる
使用後は、鉄瓶の中に残ったお湯を入れたままにせず、必ず空の状態にします。
お湯を入れたままにしておくと、錆びる原因になります。
蓋を取り、余熱や軽い空だきで内部を完全に乾燥させてください。鉄瓶は余熱が長持ちするので、沸かした後、余熱で中が自然に乾燥していきます。

乾くまで50秒ほど。鉄瓶の中が乾いていく様子をジーッと見るのが好きです。
蓋の水滴は、ふきんでこすらないように、ポンポンと軽く拭き取り、しっかり乾燥させましょう。

3.内側の湯垢を保護する
鉄瓶の内側は手を触れないようにしましょう。
使用していくうちに白い湯垢の膜が自然に育っていきますが、これは決してこすり落とさないでください。
この湯垢の膜が厚くなるほど、お湯の味がより一層美味しくなり、また鉄瓶も錆びから守られます。
4.万が一錆びてしまった場合のお手入れ
もし錆びが出てしまった場合は、煎茶を使った「金気止め」という方法が効果的です。
水を8分目まで入れ、茶さじ1杯程度の煎茶をお茶パックに入れて、水から30分くらい煮込みます。
その後、軽くすすぎ湯を1~2回沸かしてから使用します。これは煎茶に含まれるタンニンと鉄分の化学反応を利用した方法で、錆びを抑える効果があります。
南部鉄瓶の使用上の注意点
安全な沸かし方
水の量は容量の8分目までにしましょう。
蓋をわずかにずらし、吹きこぼれに注意します。
火力は中火程度が適切です。


やけど防止の注意点
本体、蓋、取っ手はとても高温になるので、必ず耐熱性の鍋つかみなどを使用しましょう。お湯を注ぐ際は、蓋がずれないように押さえながら慎重に注ぎます。
私が最初に使っていたキルティングの鍋敷き兼用の鍋つかみ(「蓋に付いた湯垢」の写真参照)は、残念ながら南部鉄瓶の高熱が手に伝わってしまいました。安全性を考慮し、素材選びが重要だと実感しました。
そこで新たにシリコン製の鍋つかみを購入しました。ネットで調べたところ、コンパクトサイズの商品は非常に限られていることが分かりました。
この商品は数少ない小さめサイズで、特に手が小さめの女性には最適です。カラーバリエーションも豊富で、インテリアとの調和も楽しめます。また、汚れたら簡単に水洗いできる実用性も魅力です。
シリコンでもゴワゴワせず、熱さもしっかり遮断するため、安全かつ快適に南部鉄瓶を扱えるようになりました。

※下記の商品ページは楽天市場のみ有効です。

まとめ
高価な買い物ではありますが、南部鉄器は適切に手入れをすれば、非常に長持ちし、100年使えると言われるほどの丈夫さと耐久性を持ち、世代を超えて受け継がれる価値があります。

使い込むほど育っていき、白湯が美味しくなるという鉄瓶が、日々の暮らしに潤いを与えてくれています。
皆さんも南部鉄瓶を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は岩鋳の鉄フライパンも使用しています。こちらもまた機会があれば紹介したいと思います。