今年1月の人間ドックで、私は白内障の診断を受けました。62歳で近視と老眼を抱えていた私は、視力検査で左眼の視力低下が判明。
かかりつけ医の診断では「白内障です。現時点では重度ではありませんが、改善には手術が必要です。」とのこと。
「まだ62歳なのに、もう白内障?」-これが診断を受けた時の最初の反応でした。確かに、私の母は70代後半になってから手術を受けました。
でも、医師から説明を受けるうちに、早めの手術にもメリットがあることを知りました。その半年後、私は白内障手術を受け、今ではメガネなしでの快適な生活を送っています。
この体験記が、白内障手術を検討されている方々の参考になれば幸いです。レンズや病院選びから手術、そして術後の生活まで、実体験に基づいた情報をお伝えしていきます。
62歳。今、手術を受けるかどうか
私の場合、症状はまだ軽い方でした。しかし、白内障だと分かると、左目のややボンヤリした見え方がますます気になってきて落ち着きませんでした。白内障で手術を受ける方は70代、80代の方が多いといいます。
私のように60代で若く症状も軽いと、手術が楽に済むし回復も早いということを医師から聞きました。数日考えましたが、いずれ手術をしなければいけないのならば、早い内に手術をしようと決意しました。
白内障手術では、60代は若いんだ!!
レンズ選択という最初の重要な決断
白内障手術で最初に行う重要な決断は、使用する眼内レンズの種類を選ぶことです。この選択によって、手術を受ける病院の検討が必要になったり、手術後の生活の質が大きく変わったりするからです。
単焦点レンズと多焦点レンズの違い
単焦点レンズ
デメリットとしては、単焦点のためピントが一カ所に固定となっております。遠くがよく見えるようにすると近くが見づらい老眼状態に。
近くがよく見える近視状態にした場合に設定した場合には、メガネをかけて遠くを見る必要があります。
健康保険の範囲内での手術をご希望なさる方、メガネの掛け外しが苦ではない方にお勧めです。
- ピントが一箇所に固定(遠・中・近のどこに焦点を合わせるかを選択する)
- 遠くがよく見えるようにすると近くが見づらい老眼状態になり、老眼鏡が必要。近くがよく見える近視状態にした場合に設定した場合には、メガネをかけて遠くを見る必要があります。
- 保険適用で費用が抑えられる(受けられる方の負担割合によって変わります。 片眼につき、1割負担の方:1万5千円程度、 2割負担の方:3万円程度、 3割負担の方:4万5千円程度です。)
- コントラストが良く、焦点が合う範囲は見え方が非常にクリア
- 夜間視界が良好(光のにじみが無い)
多焦点レンズ
- 遠近両方の視界を確保できる
- 眼鏡依存からの解放が期待できる
- 保険適用外で費用が高額(次の「多焦点レンズの種類と特徴」参照)
- 光のにじみや違和感を感じることがある
- 脳での適応期間が必要
多焦点レンズの種類と特徴
私が手術を受けた病院の多焦点レンズの資料をもとに紹介します。病院によって扱うメーカーやレンズの種類など違いもあるようです。
パンオプティクス
- 3焦点型(遠・中・近の3点に焦点を合わせるタイプ)
- 乱視対応あり
- 夜間の光のにじみは弱め
- 遠方、中間(パソコン)、近方(読書)の3焦点に対応
- 運転時の見え方が良好で、屋外での自然な視界
- 片目約27万円
ビビティ波面制御型
- 波面制御型
- 乱視対応なし
- 近年認可された新しいレンズ(取り扱っている病院は限られる)
- 単焦点レンズと同程度に光のにじみが少ない
- 小さな文字は老眼鏡の併用が必要
- 強度近視の方には使用不可
- 多焦点レンズの中では最新(2024年上半期において)
- 費用:片目約27万円
シンフォニー
- 焦点深度拡張
- 乱視対応可能
- 光のにじみあり自然な見え方
- 読書は老眼鏡が必要
- 片目約17万円と比較的リーズナブル
シナジー
- 連続焦点型
- 乱視対応あり
- 夜間の光のにじみはあり
- 遠方から手元まで落ち込みの少ない見え方
- 手元が見やすく室内向き
- 費用:片目約27万円
私が多焦点レンズを選択したわけ
遠近両用メガネやコンタクトレンズを使用していた私は、メガネなしの生活にあこがれていました。同じようにメガネだった知人が、術後にメガネなしで快適そうにしている様子も見ていました。
「夏にメガネがずれ落ちてくる不快感や、せっかく温泉に入ってもよく見えず残念だったことがなくなって最高!」と喜んでいました。
そのため、多焦点レンズにすることは迷い無く決めました。高額ですが、今後の老後を思えば、投資しても価値があると思いました。
私がレンズ選びで参考にした動画を貼っておきます。現在は、認可されたビビティを取り上げた動画も増えてきています。
- 白内障手術受けるなら知っておくべき、眼内レンズ選び方
- 白内障手術時、眼内レンズのピントを合わせる位置どう答えるか?
- 白内障】単焦点?多焦点?眼科医の答え【眼内レンズ】
- 多焦点レンズ選択決定版(2022〜2023年)
病院選びという次の重要な決断
多焦点レンズを選択したことで、次の重要な決断である「病院選び」が必要になりました。というのも、私のかかりつけの眼科では単焦点レンズの手術しか取り扱っていなかったからです。
総合病院と個人病院、どっち?
総合病院
かかりつけ医から紹介状を書いてもらうことができました。
- 手術形態:3泊4日の入院で両目の手術が可能
- 費用面:毎日の通院による交通費が不要(手術期間は運転できない。私は一人暮らしで家族に頼れない)入院費用が必要
- 設備、技術:総合的な医療体制、緊急時の対応可能
- メリット:24時間体制の安心感、 入院中の生活サポート
- デメリット:予約が取りにくい(初受診から10ヶ月以降予約可)退院後の経過観察はかかりつけ医に戻る(手術の後、医師が変わることに不安を感じました。執刀医に経過観察などのケアもしてもらいたいと思いました。)
個人病院
知人や周囲の方で、この病院に通院している方が数名いまいた。その方たちから、最新の設備と医師の豊富な手術実績、医師の人柄などの評判を聞くことができました。
- 手術形態:日帰り手術で5日間の通院が必要
- 費用面:入院費用なし、通院のための交通費が必要
- 設備、技術:最新の医療設備が充実、豊富な医療実績(私が検討した病院の場合)
- メリット:最新の設備での治療・手術、専門医による丁寧な対応、豊富な手術実績、ビビティという最新のレンズも取り扱っている
- デメリット:夜間対応の制限
様々な要素を比較検討した結果、私は個人病院での手術を選択しました。
確かに通院の手間と交通費はかかりますが、最新の設備と医師の豊富な手術実績、そして実際に手術を受けた方々からの具体的な体験談を聞けたことが決め手となりました。
多焦点レンズの中から、シナジーを選択したわけ
初診から手術1週間までのスケジュール
初診(血液検査、予約)
病院が決まると、いよいよ初診。詳しく目の検査と血液検査を行い、手術の予約をします。手術は、早くて3ヶ月後でないと予約が取れないとのことでした。
私は、仕事の兼ね合いも鑑みて、半年後に予約を入れました。
また、このときに看護師さんから多焦点レンズの種類と特徴を詳しく聞き、次回の診察までにある程度そのレンズを入れるか決めてくるように言われました。
3ヶ月前(血液検査結果確認、レンズ決定)
手術の3ヶ月前の受診で、血液検査の結果を聞き、レンズを決定します。血液検査の結果は、特に手術で支障となることは無しとのことでした。
レンズの選択に関しては、初めは、夜間の光のにじみが無いという最新のビビティを考えていました。
ただ、ビビティは乱視対応が無いこと(私は少し乱視があります)スマホや読書で小さい字がやや見づらく、老眼鏡が必要になる場合もあるということを医師から聞きました。
私は遠方や中間はもちろんですが、スマホも裸眼で見たいということが一番の願いでした。そのことを医師に伝えたところ、「小さい字の見やすさを優先するなら、シナジーがいいです。」と勧められました。
夜間の光のにじみがデメリットでしたが、夜間に運転をする機会が多いわけではないので、手元が見やすく室内向きというシナジーを選びました。
また、どちらの目から手術するかも決めます。私は左目の方が悪かったので、左目から手術をすることに決めました。
手術後、翌日まで片目で過ごすことになります。少しでも見えやすい方の目を2回目にするといいと思います。
手術日1週間前(検査、手術の詳細説明)
視力、眼圧などの検査を行います。手術期間のスケジュールや点眼薬などの詳しい説明があり、点眼薬をもらいます。保護メガネの説明もあり、S,M,Lからサイズを選びます。
また、体調管理には細心の注意を払いました。いろいろな病気の予防と感染対策を兼ねて、あまり人混みに行かないこと、食事、睡眠をしっかり取ることに気をつけました。
手術日が近づいてくるにつれて、目を手術するという恐怖感と不安も増してきました。手術を経験した友人や知人に「痛くなかったですか。」と聞きまくっていました(笑)
皆さん「大丈夫。痛くなかったよ。」と言っていました。(実際に手術は痛くなかったのか?については「手術開始」に記載してあります。)
いよいよ手術週間
手術前に、病院から通院スケジュールと点眼スケジュール、制限事項が記載された大判の一覧表をいただきました。
いつ何の点眼薬を使うのか、次の診察日はいつなのか、何ができて何ができないのかが一目で分かるようになっていて、とても便利でした。この一覧表のおかげで、不安なく見通しを持って過ごすことができました。
通院スケジュール(火曜日と木曜日に片目ずつ手術の場合)
1日目(火曜日:第1眼手術日)
13:45まで来院(私が手術を受けた病院は、毎週火曜日と木曜日の午後14時から手術日となっていました)
手術前
来院1時間前から15分ごとにサンドールP(瞳を広げる薬)点眼開始
- 手術後はシャンプーができないため、前日にシャンプーをしておく。(私は夏だったので、ふけ・かゆみを防ぐオクトというシャンプーを使いました)
- サンドールPとレボフロキサシンを持参する。
- 肌シャツの上に手術用の病衣を着て術室に入る。
- ・手術後、眼帯をした状態で着替えるため前開きの服を着てくること。丸首のトレーナーやワンピースなどつなぎの服も避ける。
- 手術前から点滴を行う。
- 指輪、時計は外す。お化粧、日焼け止めは塗らずに来院する。
- 昼食は軽めにすませておく。
- 水やお茶などの水分は飲んでもよい。
- 目の周りを消毒し、点眼の麻酔をする。(看護師から15~20分毎に2回くらい点眼してもらう)
手術開始
- 点滴をしたまま、手術室に入る。
- 医師から「返事をしたり、うなずいたりしないようにしてください。」と言われる。(唾液からの感染予防)
- 手術台に横になり、目の周りを消毒。
- 点眼麻酔をする。
- 顔にカバーを掛ける。
- 頭やまぶたが動かないように固定する。(まぶたが閉じないように)
- 目の上にとてもまぶしい光が見える。他は何も見えない。医師から「目を動かさないように、光を見ていてください。」と言われる。これが意外と難しく集中力を要した。
- 「始めますね。」という言葉で手術開始。(返事をしない、うなづかない)
- 目に絶えず水がかけられている感じ。機械音がする。目が触られているような押されているような圧迫感があるが痛みはない。
- 医師から「順調ですよ。」などと声を掛けられる。(返事をしない、うなづかない)
- 目をカバーするガーゼと眼帯を付ける。
- 10分~15分くらいで終わる。
手術は痛くありません!!
手術後
手術室から出て、5~10分はリクライニングチェアで安静にする。
- 点滴を終了する。
- 気分が悪くなく、めまいがなければ歩ける。
- 着替え、手術費、レンズ代(片目)の会計、帰宅。(自分で運転はできません)
2日目
眼帯、ガーゼを外して状態チェック、点眼薬の使用開始、経過観察
3日目(木曜日:第2眼手術日)
第1眼の経過確認、第2眼の手術、点眼指導、手術費(高度医療費制度適応)レンズ代(片目)会計、帰宅。
4日目
両目の状態チェック、点眼継続確認
5日目
最終診察、今後の通院予定の説明。
点眼スケジュール
手術前の点眼スケジュール
手術3日前から
- レボフロキサシン(抗菌薬)を手術する目に1日3回点眼
- 朝・昼・夜の3回、感染予防のために重要
手術当日
- サンドールP(散瞳薬)
- 来院時間の1時間前から15分おきに点眼
- 瞳を開くために必要な重要な準備
手術後
手術翌日から以下の3種類を使用
※すべての点眼薬は使い切りタイプで、医師の指示した期間で終了です。
- レボフロキサシン(抗菌薬)感染予防、1日4回(朝・昼・夕・寝る前)
- フルオロメトロン(ステロイド)感染予防、1日4回(朝・昼・夕・寝る前)
- ブロムフェナクNa(非ステロイド性抗炎症薬)炎症と痛みの緩和、1日4回(朝・昼・夕・寝る前)
薬のつけ忘れがないように、チェック表を作り記録しました。
手術後の生活制限
手術当日
- 入浴、シャワー不可
- 洗顔、洗髪不可
- 化粧、、アイメーク、日焼け止めなどは不可
- パーマ、毛染め不可
- 運動、事務仕事、肉体労働不可
手術翌日
- 入浴は首から下のみ可
- 洗顔は濡れタオルで拭く程度、洗髪は引き続き不可
- 化粧、、アイメーク、日焼け止めなどは不可
- パーマ、毛染め不可
- 運動負荷
- 軽い運動、事務仕事は保護メガネを着用の上可
- 肉体労働不可
手術3日目から7日目
- 入浴可
- 洗顔、洗髪可
- 化粧は可、ただしアイメークは不可
- パーマ、毛染め不可
- 運動不可
- 軽い運動、事務仕事は保護メガネを着用の上可
- 肉体労働不可
手術翌週~
- 入浴可
- 洗顔、洗髪可
- 化粧、アイメーク可
- パーマ、毛染め可
- 軽い運動、事務仕事は保護メガネを着用の上可
- 肉体労働は保護メガネを着用の上可
※温泉、スポーツは手術後2週間後から可
※これらの制限は病院によって異なる場合があります。必ず担当医の指示に従いましょう。
保護メガネについて
術後14日間は保護メガネの着用が必須でした。
- 外出時:紫外線やほこりから目を守るため
- 就寝時:無意識に目を触ってしまうことを防ぐため
最初は違和感がありましたが、徐々に慣れていきました。特に、就寝時の保護メガネは重要で、寝ている間に無意識に目を触ってしまうのを防いでくれます。
術後の経過観察スケジュール
- 1週間後:状態チェック
- 2週間後:状態チェック、保護メガネ着用終了の判断
- 1ヶ月後:定期検診
- 2ヶ月後:定期検診
- 4ヶ月後:定期検診
- 7ヶ月後:定期検診
- 以降、3ヶ月おきに定期検診
高度医療費制度の利用について
私の場合、マイナンバーカードを登録していたため、特別な申請手続きは不要でした。会計時に自動的に制度が適用され、とてもスムーズでした。ただし、注意点として、この制度が適用されるのは手術費用のみで、レンズ代は対象外となります。
シナジーを入れて半年たった今の状態
シナジーレンズを入れて最初の頃は、夜間の屋外の信号、街灯、車のライトなどから、光の周りに輪っかのようなぼやけた光(ハロー)が見えたり、まぶしさを感じて光が花火のようににじんで見えたり(グレア)しました。
光のにじみがあることはデメリットとして理解していましたが、実際に車の運転をしてみると対向車のライトがまぶしく戸惑いました。友人から「だんだん慣れて落ち着いてくるので大丈夫。気長に。」というアドバイスをもらい、心強かったです。
室内の照明は、初めから気になりませんでした。テレビ、パソコン、スマホの画面は綺麗に見えました。
半年たった今は、夜間の屋外の光のにじみは、やはりあります。しかし、手術直後よりは軽減されています。目や脳がレンズに順応してくるのだそうです。メガネの必要もなく日中や室内生活は快適です。
また、私は元々ドライアイの症状があり、点眼剤ジクアスを使用していましたが、手術後も目の乾きは感じます。引き続き、ジクアスは継続しています。
おわりに
白内障手術では、レンズ選択が最も重要な最初の決断でした。
それぞれのレンズには特徴があり、例えば運転が多い方はパンオプティクス、光のにじみを極力抑えたい方はビビティ、費用を抑えたい方はシンフォニー、室内での生活を重視する方はシナジーなど、ライフスタイルや予算に応じて最適なものを選べます。
私の場合、遠方、中間が見えて、スマートフォンなどの小さい字も見やすいことが希望だったため、シナジーを選択しました。
また、病院選びも重要な要素です。入院か日帰りか、通院の利便性、医師の実績、設備の充実度など、様々な要素を考慮する必要があります。私は、最新の設備が整い、医師の実績もある個人病院を選択しました。
手術から半年が経ち、今では朝起きてすぐに景色がクリアに見える生活が当たり前になりました。確かに、夜間に光がにじんで見えますが、日常生活に支障はありません。
手術を決めるまでは不安もありましたが、結果として大正解でした。同じように悩まれている方の参考になれば幸いです。
ただし、これはあくまでも私の体験談です。ご自身の症状や生活スタイルに合わせて、医師とよく相談の上で判断されることをお勧めします。